<就業規則と労務管理> コンプライアンスとは


コンプライアンスはしばしば「法令遵守」と訳されています。とくに企業において言われることが多く、一般市民が法律を遵守することと区別するため「ビジネスコンプライアンス」という場合もあります。

「コンプライアンス」が叫ばれるようになった背景には、倫理意識の欠如を原因とする食品の偽装表示や不正会計、違法な日雇い派遣など企業の不祥事が相次いで報道され、その都度企業が法律や倫理を守ることの重要性が指摘されてきたことがあります。

法令は常に最新の社会の実情を反映できているわけではなく、解釈がわかれることもあれば、社会の要請によって新しく制定されたり改正されたりしていきます。
また、企業には「安全な食品を供給してほしい」、「安全に働ける場を提供してほしい」といった社会からの要請があります。
これらを考えると、単に違法行為をしなければよいというものではなく、法の抜け穴を突いたり、過剰に法律を振りかざしたりすることは問題であり、企業の信用を失墜することになりかねません。
コンプライアンスは法令遵守のみならず社会通念や倫理、道徳に従うことを期待されていると考えるべきでしょう。

コンプライアンスが確立されている企業では、従業員は不正行為に加担したり、目撃したりする可能性が低くなり、従業員にとって快適な職場環境となりますし、人材の確保につながります。
逆にコンプライアンスを軽視している企業はリスクを抱えていると言えます。違反が明るみとなった不祥事の多くは、それを一番近くで見ている従業員の内部告発により表に出ています。平成16年に制定された「公益通報者保護法」は、内部告発した従業員が不利益を受けないように保護をし、それによって国民一般の安全や健康を守ろうとしているものです。労働基準法104条2項にも、従業員の告発行為を保護する規定があります。従業員が、労働基準法および同法に基づく命令に違反している事実を行政官庁または労働基準監督官へ申告したことを理由に、解雇その他の不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
しかし言うまでもなく、従業員にとって一番いいのは企業がコンプライアンスを重視し、不正行為にまきこまれないような職場環境であることです。

さらに広い概念としてCSR(企業の社会的責任)があります。