■学歴・職歴を詐称しての入社
一般職と管理職または専門職では取り扱いが異なる
 転職が一般的に行われる時代となり、最近は複数回の転職経験者も少なくありません。会社としても他社での実戦経験を持つ即戦力となり得る人材に期待して中途採用に絞った募集を多くかけるようになっています。

 こういった採用の場合、当然前職での担当業務などの経歴は重要な選考資料となりますが、これら主要な選考ポイントに詐称があった場合は選考結果に大きな影響を与え、結果的に会社が希望する人材を採り損なうことにもなりかねません。また、その詐称の結果採用された人物が約束した結果を出すに必要な能力・経験を擁していなかった場合はその後の処遇にも頭を悩めることとなります。

 ですから、履歴書で確認することはもちろんですが、具体的な経験業務や突っ込んだ技術的な話なども面接の場で聞き出しながら書面上の経歴の真偽の確認を行いつつの採用活動が必要になります。

 しかし、採用後に詐称の事実が発覚した場合、詐称した事実そのものに嫌悪感を覚え、場合によっては辞めてもらいたくなるのが人情でしょうが、解雇が認められるためにはいくつかの要件があります。

 例えば、法令に抵触するような若年齢者や逆に定年年齢にをまたぐ様な年の人は別としても、一般に年齢を一つ、二つ誤魔化していたからといって即解雇することはできません。また、健康状況の申告欄で高血圧であることを隠していたような場合も同様です。これらは実際の業務遂行にどの程度支障があるか、という基準に照らして、解雇が相当するものとは判断できないからです。

 ただ、詐称した内容が業務遂行能力に直結するような場合で、かつ専門技術を要する職種の場合は重大な契約違反となり、即時解雇の理由ともなってきます。

 また、管理職として中途採用された場合も、一般職とは違い、最初から相当の社内的ポジションを与え、それにふさわしい処遇で迎えているわけですから、詐称について一般職採用者に比して厳しい判断を下すことが可能となりますが、これも当然のことと言えましょう。

 ただ、どのケースであっても処遇の変更や解雇を実施するに当たっては、 就業規則にその基準、手順が盛り込まれていることが大前提 となります。