<就業規則と労務管理> 安全配慮義務


従業員と雇用契約を結ぶと、従業員の安全と健康を守るため「安全配慮義務」を負うことになります。

労働契約法第5条に「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と明記されています。

安全配慮義務違反があると、労働基準法、労働安全衛生法等の罰則のほか、民事上の損害賠償請求をされる可能性があります。
労災に加入していても、労災認定には時間がかかること、労災には「慰謝料」はなく、損害の100%を補償するわけではないことから、労災認定と並行して損害賠償請求がされることも珍しくありません。

損害賠償が認められるかどうかの判断基準は、過去の裁判例等から以下のことが言えます。

損害と安全配慮義務違反行為との間の因果関係
災害発生について予見していたか、予見可能であったか
危険を回避する対策を行っていたか

安全配慮について具体的にこれをしておけば良いといったものはなく、仕事内容や職場環境によって異なるのが難しいところですが、労働安全衛生関係法令を遵守することは言うまでもないことでしょう。
例えば従業員への安全衛生教育(労働安全衛生法59条)、健康診断(労働安全衛生法66条)等が基本的なところです。

安全配慮義務は歴史的には工業・製造業など、危険物を取り扱う職場で問題とされていました。しかし、社会経済の中心がサービス業へと移った現代では、身体的被害よりも精神衛生の面がクローズアップされてきています。

したがって、現代の安全配慮義務は単に作業場や器具の安全化、健康障害の防止、有害物等の規制だけでなく、従業員のストレス状態を把握し、メンタルケアを含む精神衛生面での職場環境整備まで広くとらえる必要があります。

具体的には、従業員が相談しやすい窓口を作る(外部機関を紹介する)、定期健康診断の実施に伴いメンタル面のチェックをする、メンタルヘルス教育を行う、労働時間を管理し、残業を削減するといったことが挙げられます。 就業規則の整備も重要です。