<就業規則と労務管理> 退職金規程


退職金制度について、労働基準法等では定めはありません。退職金の支給は企業の任意です。
しかし、退職金制度を設けた場合は、賃金債権となり、支払いの義務が発生します。就業規則に、適用される従業員の範囲、支給要件、額の計算および支払の方法、支払の時期などを記載しなくてはなりません。

退職金規程は就業規則の一部ですから、いったん定めたものを変更することは簡単にはできず、「不利益変更」の問題が生じます。
つまり、従業員の同意なしに退職金規程を廃止したり、一方的に退職金を減額するように就業規則を変更しても、変更理由には合理性がなくては認められません。
合理性の判断は、他の労働条件と同じく、

従業員が受ける不利益の程度
変更の必要性
変更後の就業規則の内容の相当性
労働組合等との交渉の状況
などの事情と照らして考えます。

代償措置なども十分に検討し、従業員に納得してもらえるよう、話し合いの機会を持つことが重要です。

また、就業規則のひな型にある退職金規程をそのまま使用していたりすると、実際に退職者が出た時に高額の退職金を支払わなくてはならず、一度に多くの退職者が出たりすると倒産の危機に追いやられる可能性もあります。
会社がなくなってしまっては、従業員にとっても元も子もありません。
時流に沿って、それぞれの企業にあわせて、見直しをすることも必要でしょう。

退職金に関するトラブルを防ぐために、退職金規程作成には以下のようなポイントがあります。

退職金制度の目的を明確にする
退職金制度は、従業員の定着・やる気にも大きな影響を与えます。効果的な制度とするためには目的を明確にしなくてはなりません。
目的によって、例えば勤続年数が長いほど金額を多くするのか、または企業への貢献度によって多くするのか等変わってきます。

適用される従業員の範囲を明確にする
退職金に関して、就業規則に付属する退職金規程で、正社員のみを対象とする、一定の勤続年数以上の者を対象とするなど、一部の従業員を適用範囲とすることが多いと思われます。しかし、これについて明確に書かれていなければ、基本的にはすべての従業員に支払わなくてはなりません。パートタイマーの場合はどうなるのか、数ヶ月でやめた場合はどうなるのかということでトラブルになります