<就業規則と労務管理> パワーハラスメント
いわゆる「パワハラ」に関連して、2007年10月には、「給料泥棒」「存在が目障りだ」など上司の暴言が男性をうつ病・自殺に追い込んだとしてパワハラ自殺初の労災認定がありました(平成19年10月15日東京地裁)。 パワーハラスメント(パワハラ)とは、岡田康子氏(クオレ・シー・キューブ代表)が生み出した和製英語で、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超え、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること」。一言で言うと職権を使った嫌がらせです。 セクハラに比べるとパワハラに対する認識はまだ低く、法律も未整備です。しかし、人権意識の高まる中で今後もパワハラに関する労災認定や民事訴訟は増加することが予想されます。 また、パワハラが起これば従業員の士気は低下し、生産性の低下、優秀な人材の流出につながります。 セクハラ対策に準じて、会社としての方針を明確にし、相談窓口の設置、パワハラが起きてしまったときには迅速に対応できるようにするといった対策を、就業規則の規定を軸に行うことが、トラブル防止につながるでしょう。 昔は部下を怒鳴りつけることも「教育」として捉えられていたものですが、働き方の多様化、情報化、IT化、終身雇用制の崩壊、成果主義の進展などにより、管理職のプレッシャーも大きくなっており、「人格」を否定するようなことを言って部下を叱る(パワハラ)、あるいは逆に自分の言動がパワハラになるのを恐れて部下を叱れない管理職が増えています。 パワハラが表面化したときのリスクはもちろんですが、部下を叱ることができない管理職が多い状況は会社としては問題です。 従業員は、会社が持っている業務命令権に従って、合理的な命令である限り、この命令に従わなくてはなりません。 仕事に対する考えが甘かったり、社会的マナーができていない従業員に対してはしっかり教育をするべきです。 管理者は、パワハラについて理解するとともに、従業員の権利と義務についても理解する必要があると言えます。 |