<就業規則と労務管理> うつ病と過労死の労災認定


2008年5月23日に厚生労働省により発表された「脳、心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況(平成19年度)について」によると、仕事のストレスが原因でうつ病などの精神疾患となり自殺(未遂を含む)をはかった「過労自殺」として労災認定された件数が過去最多の81件となりました。
これは労災請求件数に対する約半分が認められたことになります。
(「精神疾患」の労災請求件数は952件、労災認定件数は268件)

マスコミに大々的に報じられた平成8年の電通訴訟を契機として、平成11年に精神障害での労災認定基準が定められてから、労災請求件数、労災認定件数とも年々増加しています。

うつ病など精神疾患の労災認定に関する判断指針によると、
対象疾病に該当する精神障害を発病していること
対象疾病の発症前おおむね6ヶ月の間に、客観的にその精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷があったこと
業務以外の心理的負荷や個体的要因により精神障害を発病したのではないこと
という3点全てに該当する精神障害は業務上の疾病として認められます。

また、「過労死」とは業務の過重負荷が原因で発症した脳血管疾患、虚血性心疾患、急性心不全などにより永久的労働不能又は死に至った場合を言います。
疲労の蓄積をもたらす最大の要因と考えられる労働時間の長さですが、労災認定に関する基準は以下のとおりです。

発症1ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症の関連性が高まる。
発症1ヶ月間におおむね100時間、または発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症の関連性が強い。
訴訟となった時の金額的損失、企業イメージへの影響はさることながら、日頃メンタルヘルス問題や過重労働を軽視しているということは、生産性の低下や人材の流出につながってしまいます。
メンタルヘルスに関する教育、労働時間の管理、健康診断の実施を適切に行い、就業規則の休職制度を適切に整えることも重要です。