<就業規則と労務管理> 1年単位の変形労働時間制


1年単位の変形労働時間制とは、1年以内の一定期間(3ヶ月、6ヶ月、1年など)を単位として、その期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間(特例事業も40時間)となる範囲内で、特定の週に40時間を超えて労働させたり、特定の日に8時間を越えて労働させることができる制度です。(労働基準法第32条の4)
季節によって業務に繁閑の差がある会社について、労働時間の効率的な配分をし、「時間外労働」の発生を計画的に抑えることができます。

「労働時間の総枠」は以下の式で計算できます。

労働時間の総枠 = 40時間 ÷ 7日 × 変形期間の日数

変形期間を1年とすると、40÷7×365 で約2085時間が労働時間の総枠になります。

1年単位の変形労働時間制を導入するには、以下の事項を労使協定で定め、労働基準監督署に届け出ることが必要です。

対象労働者の範囲
対象期間(1ヶ月を超え1年以内の期間)
特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間)
対象期間における労働日および労働日ごとの労働時間
協定の有効期間
そして、同時に就業規則の変更も必要です。

対象期間における労働日と労働日ごとの労働時間は定めておくことが必要であり、これを任意に変更することはできません。しかし、先の労働日等を具体的に定めるのが難しければ、対象期間を1ヶ月以上の期間ごとに区分して、最初の期間の労働日と労働日ごとの労働時間と、それ以降の労働日数と総労働時間を定めておけばよいことになっています。この場合は、それぞれの期間の30日以上前にその期間中の労働日と労働日ごとの労働時間を特定します。

1年単位の変形労働時間制は、長期にわたって平均週40時間を達成するものですから、特定の期間に従業員に負荷がかかる恐れがあります。
そこで、「1ヶ月単位の変形労働時間制」にはない規制が設けられています。

労働時間の限度は1日10時間、1週52時間まで
対象期間が3ヶ月以上の場合、対象期間の労働日数の限度は1年間に280日
対象期間における連続労働日数は最長6日(特定期間は、最長12日)
対象期間を起算日から3ヶ月ごとに区切った各期間で、週48時間を超える週は3回以内
割増賃金の考え方は「1ヶ月単位の変形労働時間制」と同じです。

実施には、就業規則と労使協定の整備が必要です。