<就業規則と労務管理> 年俸制とは


年俸制とは従業員の給料を年間の合計額で事前に決めておく制度のことです。
一般に従業員の前年の業績を反映して年間の賃金を決定するケースが多いので、成果主義・能力主義の要素が強くなります。
賃金の額は年単位で決定されますが、実際の支払いは労働基準法第24条により、毎月1回以上定期日に支払う必要があります。

年俸制賃金制度にもいくつかパターンがあります。

・「基本年俸」を12ヶ月で割って毎月支給し、賞与を支払わないタイプ
・「基本年俸」を12ヶ月で割って毎月支給し、賞与は別の評価で支払うタイプ
・「基本年俸」を12ヶ月を超える月数で割って、超えた部分を賞与として年に何度かに分けて支払うタイプ
・タイプ3の賞与部分を固定賞与とし、これと別にプラスアルファで上乗せ賞与を別評価で支払うタイプ

これら以外にも様々なパターンが可能です。

よくある誤解が、「年俸制であれば残業代や休日労働の割増賃金を支払う必要がない」というものです。

年俸制を適用しても、労働時間の管理が必要ですし、時間外・休日労働に対する割増賃金を支払う義務は免れません。
また、上のタイプ3やタイプ4の固定賞与のように賞与部分について金額が確定している場合は、これも割増賃金の計算のベースに含めなくてはなりません。
年俸額の中に残業手当を含むことにする場合は、年俸のうちいくらが残業手当なのか労働条件通知書や就業規則などに明記することが必要です。実際の時間外・休日労働時間に基づく金額がそれを超えた時には、プラスの割増賃金を支払うことになります。

年俸制が「成果に対して報いる制度」として、そのメリットを最も活かすためには、労働基準法第41条で「管理監督者」として認められ、時間外・休日労働に対する割増賃金を支払う必要のない人たち(深夜の割増は必要)に適用するのが効果的です。

新しく年俸制を導入するにあたっては、絶対的明示事項である「賃金」に関することですので就業規則の変更が必要です。従業員に対しては導入のメリットを説明し、やる気を引き出す運用をしていきたいものです。
また、公正な評価が前提となる制度ですから、客観的で透明性のある評価制度を設計することが求められます。