<就業規則と労務管理> 退職時の証明


解雇や退職をめぐる紛争を防止し、従業員の再就職に役立てるため、「退職時の証明書」というものがあります。
退職した従業員がこれを請求した場合は、会社は遅滞なく交付する義務があります。 (労働基準法第22条第1項)

退職時の証明事項は以下のうち、従業員が請求した事項です。
・会社に在籍していた期間
・業務の種類
・役職、地位
・賃金
・退職の事由(解雇の場合はその理由)

「退職の事由」とは、自己都合退職、定年退職、退職勧奨による退職、解雇など、従業員がその身分を失った理由のことです。

解雇の理由は具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当することを理由に解雇した場合は、その就業規則の条項の内容と、その条項に該当するに至った事実関係を記入しなければなりません。
ただし、あくまでも「従業員の請求する事項のみ」を記載することになっており、請求のない項目を記入することはできません。

また、上の5つの項目以外のことを記載するよう請求があっても、応じる義務はありません。
この退職時の証明書の使い道は、その従業員に委ねられます。再就職の際の資料として、応募先企業に提出することは多いでしょう。

応募先企業から、証明書の内容について問い合わせがあった際は注意を要します。
本人が承諾していれば問題ありませんが、例えば解雇の理由を記載すると再就職に不利になると考えて証明書には載せないようにしていたのに、再就職先企業からの問い合わせに会社が直接返答することは信義則に反し、プライバシー保護の観点からも問題になる可能性があります。

退職時の証明書に加えて、解雇の場合には、解雇理由の証明書というものもあります。 (労働基準法第22条第2項)
従業員が、解雇予告の日から退職の日までの間に請求した場合には、解雇の理由を証明書に記載し交付しなくてはなりません。
つまり、解雇の理由に関しては退職前であっても請求されれば証明書を発行しなければならないことになります。