■虚偽の理由での有給休暇取得
年次有給休暇の利用目的は社員の自由であり干渉できない
 法的要件を満たし年次有給休暇を付与された労働者がこれを消化することは当然の権利であり、会社側にはその利用目的によって消化を拒否する権限はなく、そもそも利用目的の申告を強制することすら認められません。

 こういったことから考えると虚偽の理由で年次有給休暇を消化したことを理由として、この有給休暇を取り消すことはできない、というのが原則的な結論となります。ただし、例えば急な子供の入院などを理由として有給休暇を申請し、これに対して他の従業員が一致団結して休暇中の仕事をフォローしたようなケースでは、『ウソであっても処分できない』ではその後の職場の秩序維持ができなくなってしまいます。

 こんな状況をそのまま放置しては職場の士気にもかかわり、業務の生産性に影響が出てしまいますから、年次有給休暇取得手順の関する規定を 就業規則にきちんと謳い込み、手順規定に反したためとの理由で懲戒処分に処することが妥当だと思われます。

 ただし、先に述べたとおり年次有給休暇を取り消すことはできませんから、あくまでも就業規則に規定のある譴責処分や減給処分などを行うことができるにとどまります。

 また、『会社には労働者の利用目的によって年次有給休暇の消化を拒否する権限はない』と書きましたが、請求された時季が事業の正常な運営を妨げる場合は他の時季に有給休暇を与えることが認められています。これを「有給休暇請求に対する時季変更権」といい、労働基準法で規定されています。ただこの権利は、本当に業務に支障をきたすことが客観的、具体的に明らかでないと行使することはできません。例えば年末商戦で最も忙しい時に請求されて押し寄せるお客さんを捌ききれないことが明らかである、とか職場の半数以上の従業員が一斉に同じ日に請求してきたため業務が滞ることが明らかである、といったような場合です。