■協調性に欠ける社員
放置しては職場全体の士気にかかわる、会社の積極的な関与を
 従業員の採用の際には、どうしても過去の経歴だったり、資格、能力などに目が行きがちですが、人間性や協調性なども目を向けて、当然、採用可否判定の重要な要素として組み入れてゆくべきです。この協調性の欠落を見抜けず採用すると、特にチームで業務を行う職場においては様々な問題が日々持ち上がり業務遂行に大きな悪影響を及ぼすことになります。それどころか問題がこじれれてくれば、他の優秀な従業員がどんどん退職してゆく、などという事態も十分考えられます。

 こんな最悪の事態を避けるためには、会社が積極的に関与して状況の改善・打開を図らなければなりません。 就業規則に謳い込む事がもちろん必要 ですが、一般に『協調性の欠如』は普通解雇の対象となります。ただ、その『欠如』の程度を客観的に測り、解雇に相当するものとの判断を下すのは簡単なことではありません。ですから、当該従業員に関わって日々起こる様々なトラブル事例、発言内容などの問題点を詳細に記録として残してゆき、将来解雇の決断を下した際に正当性を客観的に示す資料とするのです。

 ただ、起こる事例を記録するだけでは問題の解決にはなりませんから、会社側が問題解決への努力をしてゆくことになりますが具体的には、まずは、職場の仲間と協力して仕事を進めることの重要性を説き、改善の努力を促すことが必要です。この段階で自発的努力により現状を打開する可能性を探るための機会と、一定の時間を与えます。それでも改善が見られなければ、別のセクションに異動させて、一定期間をかけて新しい職場で異なった人間関係の下での協調関係を築く可能性を探ります。それでも難しい場合、可能であればいくつかの別の職場を体験させてみます。

 ここまで会社側が努力をしても改善されない場合に初めて客観的に『正当な解雇』と判断される可能性が出てきます。ただ、企業規模の問題から別のセクションへ異動させることが不可能な中小企業では、事情が大きく違いますから判断のタイミングも自ずと変わってきます。

 争いの場に持ち込まれた場合の客観的な解雇の正当性を主張できるか否かの問題と、一人の問題社員が企業に与える悪影響を最小限に抑えるための解雇決断の最良なタイミングは必ずしも一致してきませんから、最終的には問題の現状深度と、問題の進捗の先を見通しての経営者の決断が求められることになります。