■年俸制導入に反発する
導入への理解を得るために十分な協議の場を持ち説明を行う
 そもそも年俸制とは、1年単位で支払う賃金を決めてゆく賃金額確定方法ですが、成果主義賃金の考え方を取り入れつつ実施することで、その年の勤務成績に応じて次の年の新しい賃金を確定するスタイルになり、このことが従業員のやる気を引き出し、業績の向上に資するものと期待して近年多く行われるようになったものです。

 制度導入に反発する従業員に対しては、まずこの辺りの導入メリットについて説明を行い、導入がうまく行けば会社業績が上がり、がんばった個々の従業員にも有益な制度であると理解を求めて説得をしてゆきます。

 労働基準法上は、
新制度に合わせて就業規則を労働者の意見を聞いて改訂し実施すれば、特に従業員の同意は必要ないものとされています。しかし、裁判などになれば同意なく労働者に不利益な労働条件の変更を行った点が問題視され、新制度の導入は無効との判断が下されることも十分に考えられます。

 争いにまで至らずとも、従業員の本質的な理解が得られないまま、ただただ事務的に導入しては本当の目的である『やる気を引き出し、業績の向上に資する』は「絵に描いたモチ」となってしまい、制度は骨抜きになり事実上崩壊してしまうでしょう。そして、これまで長年かけて培ってきた労使間の信頼関係に大きな傷を残すことにもなりかねません。 

 こんな状況を避けるためにも理解を求め易いような、客観的で透明度の高い評価制度を設計し、会社の実態から見て適切な無理のない運用方法を選択することが必要となります。合わせて導入後しばらくの期間はその時点の収入が維持されるような経過措置を設けることも、理解を得てゆく上で重要です。